不動産売買の参考書

共有名義不動産の売却

af0100014620w不動産の購入には多額の資金を準備する必要があります。足りない資金は住宅ローンなどの借入れに頼ることになりますが、自分1人で購入することが困難な場合には夫婦や両親と共同で購入することもあるかもしれません。

共同で購入した場合、その不動産は共有名義という扱いになります。また、出したお金によって不動産所有の比率(=共有持分)が決まります。4,000万円の物件を自分が3,000万円、自分のパートナーが1,000万円出したとすると、自分の共有持分は3/4、パートナーの共有持分は1/4になります。共有名義にすると、住宅ローンの控除を2重に受けられるといったメリットがあります。これは購入価格の一定割合を所得税から税額控除できる制度で、年末の住宅ローン残高の1%が税控除できます。それぞれ1%ずつ控除できれば、全体の出費もかなり抑えられます。

逆に、売却の際に共有者全員の同意がなければいけないと思われがちですが、実は自己持分のみを売却したい場合、他の共有者の承諾や同意はまったく必要ありません。共有者全員ではなく、その中の数名だけが自己持分を売却するときも同様、共有者全員の同意はいりません。共有名義の不動産売却を考えた場合、必ずしも共有者全員の意思が統一されているとは限りません。売却を拒み続ける共有者が1人でもいたら不動産全体の売却もできなくなってしまいます。そこで民法206条では所有物を自由に売却することの権利として自己持分のみの売却が認められているのです。

もちろん共有名義の不動産は共有者全員で売却することが最善ではありますが、「共有者である親族のトラブルからいち早く離脱したい」「共有者の1人が売却に応じない」「他の共有者から持分をタダでよこせと言われている」「後顧の憂いを断ちたい」「離婚したため売ってしまいたい」など簡単に売却できない事情もあります。共有者間のトラブルに発展することも多いため、なるべく早い段階で専門家に相談し、対策を講じることをおすすめします。